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マズローの欲求5段階説とは?主な本や心理学的な意義、6段階目について

マズローの欲求5段階説とは?主な本や心理学的な意義、6段階目について
DeepEditor

マズローの欲求5段階説は、現代のマーケティングに有効活用できる心理学的理論として有名です。市場やターゲット層にアプローチしやすい事業を展開しやすくなるだけでなく、自社の売上向上につながります。今回は「マズローの欲求5段階説」に焦点を当て、その概要や背景、分類、マーケティングへの活用方法などをご紹介します。気になるポイントを一挙確認しましょう。

マズローの欲求5段階説とは?

(引用:https://blog.leapt.co.jp/what-is-maslows-five-levels-of-needs-what-marketers-need-to-know

マズローの欲求5段階説とは、心理学者アブラハム・マズローが提唱した理論で、人間の欲求は「生理的欲求・安全欲求・社会的欲求・承認欲求・自己実現欲求」の5階層に分類できるという理論です。

マズローは、1つ下の階層にある欲求が満たされると、次の階層にある欲求を満たそうとする人間の心理的行動を提唱しました。

第1段階:生理的欲求

生理的欲求とは、生きていくために必要な、基本的な欲求です。

たとえば、人間が生命を維持するための食欲・性欲・睡眠欲などの三大欲求や呼吸欲などが生理的欲求に該当します。

第2段階:安全欲求

安全欲求とは、心身ともに健康かつ経済的にも安定した生活を送りたいという欲求です。

たとえば、食糧や寝床の確保などは安全欲求に該当します。

一般的に、幼児は安全欲求が強い傾向にありますが、大人になるにつれ欲求を抑えることができます。そのため、マズローは自然と次の階層(社会的欲求)へと欲求が昇華し始めると言います。

第3段階:社会的欲求

社会的欲求とは、友人や家庭、会社などの社会や集団、組織に受け入れられたいという欲求です。

たとえば、他者から愛されたいと感じることは社会的欲求です。

マズローは社会的欲求が満たされないと、人間は孤独感や不安感を覚え、鬱に陥るケースがあると言います。

第4段階:承認欲求

承認欲求とは、他者から認められたいという欲求です。

たとえば、自分以外の他者から優秀と評価されたいことや認められたいと感じることは承認欲求です。

近年だと、SNSで「いいね」をもらいたいという感情も承認欲求に該当します。

なお、承認欲求には「低レベルの尊重欲求」と「高レベルの尊重欲求」があります。

低レベルの承認欲求 高レベルの承認欲求
他者からの注目や尊敬、名声などを受けることで欲求が満たされる 技術や能力の習得、自立性などによる自己尊重の意識が高くなることで欲求が満たされる

マズローは、承認欲求が満たされないと、劣等感や無力感など負の感情を抱きがちになると言います。

第5段階:自己実現欲求

自己実現欲求とは、自分の世界観や人生観に基づき、「本来あるべき自分」になりたいという欲求です。

たとえば、自分の夢を叶えることや理想を現実にしたい、他の誰もが成しえなかったことを自分が成し遂げたいという思い、自分は自分として生きていきたいという欲求が該当します。

欲求を満たすには、自分が思い描く理想と現実との同一化が必要です。

(第6段階:自己超越)

マズローは5段階の欲求の上に、第6段階目の欲求「自己超越」があると発表しています。

自己超越とは、自分のエゴを超えたレベルの理念を実現したいという、他者や社会など自分の外にベクトルが向いている欲求です。

たとえば、資産や資本に余裕がある人が、純粋な気持ちで慈善活動や寄付を行いたくなる欲求が該当します。

自己超越の欲求に達するのは、全人類の数%程度とされており、実現を目指す人は稀だとしています。

欲求段階が7段階とも言われるわけ

マズローの欲求段階は7段階とも言われています。その理由について詳しく見ていきましょう。

5段階とは別に2つの欲求が紹介されている

5段階欲求は、マズローの著書の、「人間性の心理学」で紹介されています。その本の中では5つの欲求とは別に2つの欲求を合わせて、7つの欲求が紹介されています。その2つの欲求は5つの欲求とは違って段階にはなっておらず、独立したものとみなされています。5段階欲求は基本的欲求であり、これが満たされることで、もう2つの欲求が発現します。

審美的(調和・秩序・美)欲求

審美的欲求とは調和、秩序、美しさを求める欲求です。さらに、その中には精神的ゆとり、向上心も含んでいます。この欲求は自己超越欲求とも言われており、自分のエゴを超えたレベルでの理念を実現したいという欲求でもあります。原始人まで遡って、あらゆる文化、あらゆる時代に見られる欲求と紹介されています。

認知欲求

認知欲求とは知る欲求と理解する欲求のことを言います。好奇心などの正の衝動そのものが基本的欲求であるとされています。人は特定の物事についての一部を知るとより深く理解したくなるという性質があります。そのため、知る欲求と理解する欲求には相互性があるということも指摘されています。

実在の自己超越者たち

マズローは自己実現している人を自己超越者と呼んでおり、具体的な人物を例として挙げています。自己超越者について詳しく見ていきましょう。

自己超越者は12名ではなく4名?

Wikipediaの「自己実現論」の説明に超越者として12人の人物をマズローが挙げているという記載があります。しかし、日本語訳されている6冊のマズロー著書の中ではそのような記述は見られません。具体的に言及されているのは4名とされています。

具体例で挙げられている実在の人物

以下に4名の人物の概要と、自己超越者とされる理由を表にまとめました。

人物名 人物像 自己超越者とされる理由
アルベルト・アインシュタイン 相対性理論を発明した物理学者 問題解決に関する有名な名言の内容が超越者特有の視点から語られている
オルダス・ハックスレイ 文芸作家、神秘主義者 あるがままの世界の姿を見て、素直な好奇心や探究心から美や謎を追い求め、それらを自己表現する過程で自分の人間性を深めている
アルベルト・シュバイツァー 医師としてアフリカの医療に携わる 医療などを通じた、正義や真実など高次欲求を追求
マルティン・ブーバー 宗教哲学者、社会学者 「対話の哲学」によって自他の統合を目指している

マズローの欲求5段階説が生まれた背景

ここでは、マズローの欲求5段階説が生まれた背景について解説します。

マズローの欲求5段階説は、ヒューマニスティック心理学というジャンルに分類されます。

ヒューマニスティック心理学とは、人間が主観的に体験する心の動きを重視・強調した心理学のことです。

今でこそ当たり前の考え方ですが、以前は行動主義心理学と精神分析学の2つが主流でした。

行動主義心理学 精神分析学
内的・心的状態に依拠せずとも科学的に行動を分析・説明できるという心理学。人間の心理は機械のように外界の刺激に対する反射の集まりにすぎないという考え方。 人間の精神の大部分は、無意識に占領されているという心理学。人間が意識的に行動しているように見えることも、無意識領域が意識に影響を与えているという考え方。

しかし、2つの理論にはある懸念点があります。

行動主義心理学では、人間をあまりに単純に考えすぎている点、精神分析学では、「無意識」という実証できないものを理論として考えてしまっている点です。

そこで生まれたのが、心理を日常的感覚に即した形で理論化するヒューマニスティック心理学です。

マズローの欲求5段階説における欲求の分類

マズローの欲求5段階説における5つの欲求は、性質に応じてそれぞれ分類されることがあります。

たとえば、「生理的欲求・安全欲求」は、生命維持に必要な物資に関わる欲求なので「物質的欲求」、「社会的欲求・承認欲求・自己実現欲求」は、心の満足度に関わる欲求なので「精神的欲求」と分類されます。

他にも「生理的欲求・安全欲求・社会的欲求」は、自分が関係する外部環境を満たそうとする欲求に近いことから「外的欲求」、「承認欲求・自己実現欲求」は、自分の内面を満たそうとする欲求に近いことから「内的欲求」と分類されます。

マズローの欲求5段階説とマーケティングへの活用方法

ここでは、マズローの欲求5段階説とマーケティングへの活用方法をご紹介します。

たとえば、「飲食店」を例にあげてみましょう。

マズローの欲求5段階説に即して分析してみると、顧客のさまざまなニーズに対応していることがわかります。

  1. 生理的欲求:空腹を満たしたい、食事を楽しみたい
  2. 安全欲求:食材やセキュリティの安全性が高い場所で食事したい、落ち着いた空間で過ごしたい
  3. 社会的欲求:店員から丁重に扱われたい
  4. 承認欲求:人気店に訪れたことを自慢したい、料理の写真をSNSに投稿したい
  5. 自己実現欲求:店員に紳士な対応することで、自分の余裕をアピールしたい

以上のように、まずは自社商品・サービスが顧客のどのようなニーズに応えうるのか、マズローの欲求5段階説に沿って書き出してみると、現状の商品・サービスには何が足りないのか、何が強みになっているのかが把握・分析しやすいです。

自社商品・サービスには何が要求されているのか、マズローの欲求5段階説に当てはめて顧客のニーズを洗い出し、マーケティング戦略に活用してみましょう。

マズローの欲求5段階説のビジネスへの応用

マズローの欲求5段階説はビジネスにも応用することが可能です。具体的な方法について確認していきましょう。

組織マネジメント

ビジネスにおいて生理的欲求を満たすには、睡眠時間が確保できないような長時間労働がない、体力の回復をはかれる休日がある、生活給が保障されているなどを満たす必要があります。
安全の欲求を満たすためには安全対策がとられ労働災害が起きない、明るさや空調など環境が整えられている、ハラスメントがなくメンタルを病む心配がない、雇用が保証されているといったことが必要です。
社会的欲求を満たすためには職場の仲間として受け入れられていること、自分が担当する仕事が会社・職場の役に立っていると実感することが求められます。
承認欲求は出世して役職に就く、重要なプロジェクトを一任されるなど、責任と権限を与えられることで満たされます。

従業員のモチベーション管理

組織マネジメントだけではなく、従業員のモチベーション管理にもマズローの欲求5段階説は応用できます。
まずは育成対象者の欲求がどの段階にあるかを見極めるようにしましょう。欲求の段階を適切に把握することで、その段階に応じた対策、アプローチを行うことが可能になります。例えば、生理的欲求が不足している段階では、健康につながる取り組みや習慣をチーム単位で取り入れることで、長時間労働や残業を防ぐことができ、社員のモチベーション低下を防ぐことができます。また、自己実現に向けての目標を提示し、具体的な行動を促すことで、さらにモチベーションを上げることに寄与するでしょう。

マズローの欲求5段階説の問題点

欲求5段階説は有名な理論だが、それに対する批判的意見も多いです。批判の根拠として多いのは、理論が少ない被験者から構築されている点にあります。実際多角的に実験で証明されているわけではなく、アインシュタインなど実在の人物の生涯を参考に構築されています。また、内容自体の誤りを指摘する意見もあり、例えば日本人は自己実現欲求ではなく安全欲求が最上位なのでは、という指摘もされています。一方で、感覚的にこの理論がある程度理にかなっていると見る人も多いです。実際、マーケティングなどビジネスへの応用も効果があると見られており、この理論の意義は大きいといえます。

マズローの主な本

マズローの主要な著作はいくつかあります。主な著作とその概要、おすすめの点について見ていきましょう。

本のタイトル 概要 おすすめな点
人間性の心理学 科学全般や心理学全般、動機づけ理論・行動論・認知論や基本的欲求の話、精神的な病・心理療法や健康、また破壊性や愛情についての話など多岐にわたる内容が記載されています。生理的欲求などの基本的欲求と自己実現について詳しく説明されています。 マズロー書籍の第一作目であり、代表著作の一つと言える書籍で、マズロー心理学の基礎が詰まっています。マズロー心理学に触れてみたいという方は絶対に読んでおくべき一冊です。
完全なる人間 一作目の『人間性の心理学』の続編になり、心理学論、動機論、価値論、欲求階層、自己実現などについて網羅されています。
自己実現における重要な要素である「創造性」「至高体験」「B価値」「B認識」について詳細に語られています。
初版は1962年にアメリカで発行され、当時は20万部も売れ心理学の書籍としては異例の大ベストセラーになっています。マズローの語る自己実現を把握したい方におすすめの一冊です。
創造的人間 特に宗教と至高体験について詳しく書かれており、全体的に宗教的、あるいは哲学的な記述が多くなっています。また、現代教育の問題点やマズローが考える理想的な教育についても語られています。 ページ数が230ページとマズロー書籍の中でも二番目にコンパクトなサイズ感で、読みやすく、価格も1,200円程度で、全マズロー書籍の中でも一番リーズナブルな値段で手に入れることができます。
完全なる経営 マネジメントをメインテーマにした経営論に関する書籍です。マズローが、1962年にカリフォルニア州にある電子機器を製造する会社の従業員の調査し、その調査の中で編み出した経営論や組織論やマネジメント理論をまとめた本です。 マズローが語るリーダーシップ論・モチベーション理論、経済に関する考察は、どなたでも日常で活かすことができるような本質的な話になっており、素晴らしい内容です。

人間性の心理学

マズロー書籍の第一作目であり、代表著作の一つと言える書籍で、マズロー心理学の基礎が詰まっています。マズロー心理学に触れてみたいという方は絶対に読んでおくべき一冊です。科学全般や心理学全般、動機づけ理論・行動論・認知論や基本的欲求の話、精神的な病・心理療法や健康、また破壊性や愛情についての話など多岐にわたる内容が記載されており、生理的欲求などの基本的欲求と自己実現について詳しく説明されているおすすめの書籍です。
目次は第1章 科学への心理学的アプローチから第16章 正常、健康、価値までの全16章となっています。

完全なる人間

初版は1962年にアメリカで発行され、当時は20万部も売れ、心理学の書籍としては異例の大ベストセラーになっています。一作目の『人間性の心理学』の続編になり、心理学論、動機論、価値論、欲求階層、自己実現などについて網羅されています。マズローの語る自己実現を把握したい方におすすめの一冊です。
目次は第1章健康の心理学へから第14章成長と自己実現の心理学に関する基本的命題までの全14章です。

創造的人間

1964年にアメリカで『Religion,values and peak-experience』という原題で出版され、特に宗教と至高体験について詳しく書かれており、全体的に宗教的、あるいは哲学的な記述が多くなっています。また、現代教育の問題点やマズローが考える理想的な教育についても語られています。第一部から第三部に分かれており、宗教、至高体験、自己実現としての創造性について語られています。

完全なる経営

マネジメントをメインテーマにした経営論に関する書籍です。マズローが、1962年にカリフォルニア州にある電子機器を製造する会社の従業員の調査し、その調査の中で編み出した経営論や組織論やマネジメント理論をまとめた本です。マズローが語るリーダーシップ論・モチベーション理論、経済に関する考察は、どなたでも日常で活かすことができるような本質的な話になっており、参考にするべき点が多数あります。目次は経営理論、心理的健康、リーダーシップ論、創造性など多岐にわたります。

マズローに関するよくある質問

マズローは何をした人なのか?

アブラハム・ハロルド・マズローはアメリカの心理学者で、人間性心理学の生みの親とされる人物です。主体性や創造性などの人間の肯定的な面に注目した、心理学の新しい潮流を作った偉大な心理学者です。

マズローの欲求とはなにか?

マズローの欲求とはマズローの欲求5段階説と呼ばれるものです。内容として、人間には5段階の欲求があり、下の基礎的な欲求から上の欲求に向かって達成していくことを筋道立てて説明したものとなっています。

マズローの欲求階層の6段階目は何ですか?

マズローは晩年に5段階目の次の、6段階目となる自己超越欲求を提唱しています。自己超越欲求とは、他者に喜んでもらいたい、社会をより良いものにしたいといった、他社や社会を想う欲求のことを指しています。

マズローの欲求5段階説をマーケティングに活用し、自社の売上を向上させよう!

このページでは、「マズローの欲求5段階説」に焦点を当て、その概要や背景、分類、マーケティングへの活用方法などについて解説しました。

マズローの欲求5段階説は、マーケティングに非常に役立つ考え方です。

理解を深めることで、自社商品・サービスの売上向上につながる可能性があるため、ぜひ本記事を参考に、自社のビジネスにマズローの欲求5段階説を活用してみてはいかがでしょうか。

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