フェムテックとは?市場規模や関連企業、更年期など課題ごとの商品一覧
フェムテックとは、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するための商品やサービスのことを指します。しかし、名前は聞いたことがあっても、具体的な内容を知らない方もいるでしょう。そこで、本記事ではフェムテックの概要や現状、健康課題ごとの商品一覧などを紹介します。
フェムテックとは?
フェムテック(Femtech)とは、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を掛け合わせた造語です。具体的には、生理や妊活、産後、更年期など、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する製品やサービスのことを指します。
フェムテックとフェムケアの違い
フェムケア(Femcare)とは、女性(Female)とケア(care)を組み合わせた造語のことを指します。フェムテックとフェムケアは明確に区別されていませんが、テクノロジーを使わずに女性の健康課題の解決をサポートするものをフェムケアと呼ぶのが一般的です。
フェムテックが対象としている悩み
フェムテックが取り扱う女性の健康課題はさまざまです。主な分野としては、月経や妊娠、産後ケア、更年期、セクシャルウェルネス、メンタルヘルス、女性特有疾患などが挙げられます。課題解決の対象となる具体例は、以下の通りです。
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上記のような問題を解決するため、多種多様な製品やサービスが出ているので、自分の悩みに合わせて取り入れてみると良いでしょう。
フェムテックが注目されている理由
フェムテックは、近年急速に注目を集めるようになりました。そこで、ここではフェムテックが注目される理由について解説します。
女性の社会進出
女性の働き方改革は、日本を含む世界的なムーブメントになっています。働く女性が増加し、社会への影響力も大きくなるとともに、女性の健康課題に対する取り組みが重視されるようになりました。女性が働きやすい環境づくりを健康面から支えるため、福利厚生にフェムテックを導入する企業も増えています。
ジェンダー平等意識の高まり
世界では、ジェンダー間で格差のない社会づくりを目指す「ジェンダー平等意識」が高まっています。日本でも長い間、雇用や賃金の格差、家事や育児の負担の割合など、男女の不平等が社会的な問題と捉えられてきました。
世界経済フォーラムが発表する「ジェンダー・ギャップ指数」において、日本は146カ国中116位とかなり低い順位にあります。そのため、ジェンダーギャップが根強く残る現状を改善することが社会全体で求められるようになったと考えられるでしょう
女性特有の健康問題による経済損失
女性の社会進出が進むにつれて、以前は当たり前とされていた女性特有の健康問題に目が向けられるようになりました。例えば、月経による体調不良の労働損失は、4,911億円にものぼると試算されています。さらに通院・医薬品にかかる費用負担も合わせると、総額は約7,000億円とも言われており、健康問題による経済的損失は膨大であると言えるでしょう。
こうした損失を解消し、女性がより働きやすい社会をつくるためにフェムテックによる課題解決が望まれています。
企業や自治体間の競争
女性に配慮した労働環境の提供は、一部の企業や自治体で積極的に取り入れられています。
例えば、丸紅や小田急といった大手企業では、多様な働き方を認めたり、妊活のサポートを福利厚生に含めたりといった施策を導入するようになりました。また、神奈川県横須賀市を始めとした自治体でも、妊活に取り組む市民に向けた相談窓口の開設などの対策を行っています。
働く女性が健康問題解決の取り組みを積極的に行っている組織を選ぶのは、当然のことだと言えるでしょう。そのため、働き盛りの女性から評価を得ることを目的に企業や自治体間で競争が起き、フェムテックの導入が進んでます。
SNSで女性が声をあげやすくなった
これまでは、女性特有の健康問題は話題に出しづらく、1人で悩みを抱える人も少なくありませんでした。近年は、SNSで女性が声をあげやすくなったのに加え、投稿内容が共感を生んで大きな話題に発展することもよくあります。
SNSの広がりとともに女性同士の情報共有が頻繁に交わされるようになり、社会の認知も進んだことで、フェムテックに対する関心も高まるようになりました。
テクノロジーの発展
前述のSNSはもちろんのこと、スマホアプリなどでは女性特有の健康問題解決を目的としたサービスが増加しています。また、データの収集も進んでおり、ビッグデータやAI、IoTといった先端テクノロジーも問題解決に活用されるようになりました。こうしたテクノロジーの発展によって、以前はアプローチが困難だった女性特有の健康問題への対応が進むようになっています。
フェムテック市場の現状と課題
アメリカの調査会社フロスト&サリバンは、2025年までにフェムテックの世界市場の規模が5兆円にまで拡大すると予測しています。
現在のフェムテック市場はまだ成熟しておらず、始まったばかりです。そのため、粗悪品や信頼性のない業者も一定数存在します。
フェムテック製品やサービスに関する業界統一の品質基準は確立されておらず、信頼性や安全性の担保は各事業者に委ねられているのが現状です。消費者が不利益を被らないように、企業や行政でルールを整備していくことが今後の課題として重視されています。
出典:Frost & Sullivan「Frost & Sullivan Defines Top Femtech Global Opportunities by 2024」
フェムテックの具体的なサービス・商品一覧
フェムテック業界では、月経や妊活、産後ケアなど、各カテゴリによって多種多様なサービスや商品が出ています。ここではサービスや商品の具体例を紹介するので、参考にしてみてください。
カテゴリ | ソリューション |
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月経・生理痛 | 吸水ショーツ、月経カップなど |
不妊・妊活 | 月経管理・妊活サポートアプリ、卵子凍結サービスなど |
妊娠・産後ケア | 授乳用吸水ブラジャー、陣痛トラッカーなど |
更年期症状 | 更年期サポートアプリ、骨盤底筋群トレーニングアイテムなど |
女性特有疾患 | 膣内環境サポートサプリ、デリケートゾーン専用ソープなど |
セクシャルウェルネス | セルフプレジャー商品、性交痛軽減グッズなど |
メンタルヘルス | カウンセラーとのマッチングサービス、睡眠療法など |
月経・生理痛
月経・生理痛の分野では、吸水ショーツや月経カップを始めとした商品の開発が進んでいます。
吸水ショーツは、吸水や防臭などの機能を備えており、タンポンやナプキンとともに使用することで月経時のストレスを減らすことを目的としたアイテムです。月経カップは膣内に挿入し、経血を溜める生理用品のことを指し、ナプキンによる蒸れやかぶれ、ニオイの軽減に繋がります。
不妊・妊活
不妊・妊活においては、月経管理・妊活サポートアプリ、卵子凍結サービスなどが挙げられます。月経管理・妊活サポートアプリは、基礎体温や生理日のデータを記録することで、次の排卵日や生理日を予測する機能を備えたものです。
卵子凍結サービスは、自分の卵巣から取った卵子を凍結し、保管するサービスを指します。女性は加齢とともに妊娠しづらくなり、流産率が上がると言われているため、若いうちに卵子を採取し、将来に備える女性も増えています。
妊娠・産後ケア
妊娠・産後ケアでは、授乳用吸水ブラジャーや陣痛トラッカーなどがあります。授乳用吸水ブラジャーは、ブラジャーのカップに吸水性を備えた素材を使用することで、母乳が漏れるのを防ぐアイテムです。
陣痛トラッカーは、専用アプリやパッチ、センサーなどを連動させて陣痛が起きているか否か判別するサービスです。陣痛が起きているかわかりづらい初期段階でも陣痛を検知できることから注目を集めています。
更年期症状
更年期症状では、更年期サポートアプリや骨盤底筋群トレーニングアイテムが注目されています。更年期サポートアプリは、体調記録やパートナーとの体調情報の共有など、つらい更年期を乗り越えるための機能を備えているのが特徴です。
骨盤底筋群トレーニングアイテムは、子宮脱の予防などを目的に骨盤の底にある骨盤底筋を鍛えるアイテムで、太ももに挟むタイプや膣内に挿入するタイプなどがあります。
女性特有疾患
女性特有疾患には、膣内環境サポートサプリメントやデリケートゾーン専用ソープがあります。膣内環境サポートサプリメントは、良好な膣内環境を維持することを目的としたサプリメントです。
デリケードゾーン専用ソープは、通常のボディソープと比べてデリケートゾーンへの負担が少なく、安全に洗浄できるアイテムとして注目されています。
セクシャルウェルネス
セクシャルウェルネスの分野では、セルフプレジャー商品や性交痛軽減グッズを始めとしたアイテムが開発されています。セルフプレジャー商品は、快感を得ることでリラックス効果やストレス軽減効果などが期待できるでしょう。
性交痛軽減グッズは、男性が装着することでお互いの身体に負担をかけず挿入の深さを調節できるアイテムであり、女性が感じる性交痛の緩和に繋がります。
メンタルヘルス
メンタルヘルス分野では、カウンセラーとのマッチングサービスや睡眠療法といったサービスが挙げられるでしょう。カウンセラーとのマッチングサービスでは、多数のカウンセラーの中から本人にマッチした人材の紹介などを行います。
睡眠療法は、催眠に入った状態でストレスや悩みの原因を探したり、解決策を見つけたりする療法です。リラックスした精神状態で潜在意識と向き合うことで、問題解決に繋がりやすくなると考えられています。
フェムテックの関連団体やイベントなど
フェムテックについて知識を深めたい場合は、関連団体やイベントもチェックしておくと良いでしょう。ここでは、代表的な関連団体やイベントなどを紹介します。
フェムテックジャパン
フェムテックジャパンは、フェムテック製品やサービスを提供する企業・団体・個人のサポートを行っている団体です。フェムテックに関連した企業や人が集まるイベント「フェムテックジャパン / フェムケアジャパン」を開催していることでも知られています。他には、ナレッジサイトやセミナーの運営、マーケットリサーチなど、フェムテックに関するさまざまな活動を行っています。
Femtech Tokyo
Femtech Tokyoは、フェムテック・フェムケア企業が一堂に会する東京の展示会です。企業の経営層や小売、メーカー、クリニック、サロン、自治体など、幅広い分野の人・組織が集まります。最新サービスに関するプロモーションが行われるため、フェムテックやフェムケアの最新トレンドを把握するのに役立つでしょう。
フェムテック検定
フェムテック検定は、日本フェムテック協会が主催する協会認定資格です。フェムテックに関連した女性特有の課題や悩みへの理解を深めることを目的としています。検定には3級から1級まであり、合格すると級に応じた称号が与えられます。3級は受講料無料ですが2級・1級には受講料がかかるため、事前に確認しておきましょう。
フェムテックに関するよくある質問
フェムテックとはどういう意味ですか?
フェムテック(Femtech)は、Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を合わせた造語であり、女性特有の健康課題をテクノロジーによって解決する商品やサービス全般のことです。思春期から老年期まで、それぞれのライフステージごとの課題解決にも対応し、女性が社会で快適に過ごすためのサポートを行います。
フェムテックとフェムケアとは何ですか?
フェムケア(Femcare)とは、女性(Female)とケア(care)を組み合わせた言葉です。フェムテックとフェムケアはいずれも女性の健康問題の解決を目的としており、明確に区別されていませんが、特にテクノロジーを活用していないものをフェムケアと呼びます。
フェムテックはなぜ注目されているの?
男女の労働環境の格差是正を巡る運動が世界的なムーブメントになるとともに、女性の健康課題への注目度も高まるようになりました。特に日本は、賃金格差や家事分担などにおける男女の不平等が社会的な問題になっています。女性が働きやすく、暮らしやすい社会を実現するため、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決する動きが広まるようになりました。
女性の社会進出においてフェムテックは欠かせない
女性の社会進出において、フェムテックは欠かせないものとして注目されています。企業や自治体でもフェムテックが重視されるようになり、さまざまな施策が導入されるようになりました。また、吸水ショーツや月経カップなど、フェムテック関連商品・サービスの展開やイベントの開催なども行われています。フェムテックへの理解を深め、女性が過ごしやすい社会を目指していきましょう。
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